I-Method

アウトローとベンチャー

第2部 アウトローの手口と封じ込め
 第3章 不法投棄ゴールドラッシュ
  1 大規模不法投棄…手口のデパート

1−3 最終処分場の無許可拡張…敦賀市・四日市市


 敦賀市、四日市市、宮城県村田町などで相次いで発覚した最終処分場の無許可拡大は、埋立総量で100万立方メートルを超えるものもあり、不法投棄以上に悪質な事件である。
 不法投棄ばかりが悪玉にされているが、それよりはるかに問題の大きい最終処分場が全国各地にある。最終処分場の構造を無許可で改変して容量を増やすのは、常套手段といってもいい、ありふれた手口なのである。
 最終処分場の無許可拡大は、無許可事業範囲変更という罪名になるため、不法投棄の統計にカウントされていないが、むしろ最大の不法投棄現場は、こっちなのである。

 最終処分場の不正行為には、無許可拡大のほかにも、埋立廃棄物の移動、マニフェストの空売り、中間処理残渣やリサイクル残渣の偽装などの手口がある。
 無許可拡大は、行政が最終処分場を信用して立入検査が少ないことをいいことに、エリアをどんどん拡張してしまう手口である。仮に行政が立入検査で改変に気付いても、覆土用の土砂のストック場であるとか、残土処分場であるとか抗弁するのである。土をかぶせてしまえば、掘削検査やボーリング検査をしないかぎり、不正を証明することはできない。
 行政の立入検査が頻繁な地域では、大規模なエリアの拡大はできない。しかし、この場合でも処分場の底に深穴を掘ったり、堰堤に横穴を掘ったりして、その日のうちに埋めてしまうという姑息な手口なら使える。それでも10%程度の容量拡大は簡単にできる。
 とくに最終処分場が許可になった当初と、残存容量が僅かになったときに、構造の改変やエリアの拡大が多くなる。行政がこのことをわかって警戒していれば、そうそう大胆なことはできないはずである。
 離れた場所に無許可の第二処分場を設置するという手口もあるが、こうなるともう不法投棄そのものである。

 埋立廃棄物の移動は、最終処分場の許可を延命するために行う偽装である。特に建設汚泥の最終処分場では、天日で乾いてしまった汚泥は土砂と見分けがつかないので、残土処分場に移動しても問題になることがまずなく、移動が常套的に行われている。このため、埋めても埋めても埋め終わらない底なし沼のような魔法の処分場となっているところもある。建設汚泥と建設残土の処分料金の価格差が、移動の利益になる。しかし、建設汚泥の有効利用が増えたため、魔法の処分場の仕事は急減している。
 処分料金の高い都市近郊の最終処分場と、安価な僻地の最終処分場の価格差を利用した埋立物の移動もある。さらに悪質な場合は、移動先が不法投棄現場だったり、無許可最終処分場だったりする。

 空売りは、最終処分場の残存容量がもうないのに、搬入券やマニフェストを前売りしてしまったり、廃棄物を受け入れていないのにマニフェストに処分済みのスタンプを押してしまうといった偽装行為である。
 空売りは、最終処分場が自分でやる場合と、収集運搬業者と結託してやる場合がある。空売り分は、不法投棄で帳尻を合わせるしかなくなる。

 中間処理残渣の偽装というのは、売れそうなプラスチックか紙くずをほんの2、3枚抜き取ったことにすれば、あとの廃棄物はなんらの処理もしていないのに選別残渣ということになるという法解釈を悪用して、最終処分業の許可のいらない自社処分場に埋め立てしまう行為である。
 この手口を使って、極端な場合には100万立方メートルという巨大な最終処分場を、許可なく堂々と使っているケースもある。
 この手口は、最近では容器包装リサイクル法の抜け道としても用いられ、リサイクル残渣と称して、何らの処理もせずに圧縮・梱包しただけの容器包装が産廃の最終処分場に埋め立てられるケースが増えている。市民が丁寧に分別回収した容器包装が、そのまま捨てられているのである。これも容器包装の再商品化委託料と、産廃の最終処分料の価格差をねらったアウトロービジネスであり、容器包装リサイクル協会の監視の目が甘いため、容器包装錬金術として蔓延してしまっている。

 最終処分場は違法行為の温床になっているだけではなく、環境汚染の温床にもなっている。とくに廃棄物処理法の規制が緩かった時代の環境汚染については、違法性を問えないこともあり、なんらの調査もされていない。
 かつては廃油を10倍の土と混ぜて、素掘りの穴にすぎない安定型処分場に埋め立ててもよかった時代があり、PCB、VOC、そのほかさまざまな有害物質を含む廃油で汚染された土壌が処分場に大量に埋まっている。
 また、香川県豊島で深刻な汚染をもたらした廃自動車や廃家電のシュレッダーダストも、安定型処分場に埋め立ててよかった時代があり、重金属やVOCで大規模に汚染された処分場が全国各地にある。
 さらに、野焼きが認められていた時代の焼却灰は、すべてその場に埋められているが、ダイオキシン汚染の調査はされていない。市町村の清掃工場の焼却灰の処分先の調査も、中途半端に終わってしまった。
 違法性を問えない過去の甘い規制による不の遺産は、不法投棄現場の百倍、あるいはそれ以上もあると推定されるが、話題にすらならず、不法投棄ばかりが悪玉とされているのである。

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