I-Method

アウトローとベンチャー

第1部 アウトローの二重性
 第2章 社会の二重構造とアウトロー
  3 アウトローの組織化

3−2 永続性のパラドクス


 アウトローの組織は法的根拠のない不確実な存在であり、いつ幹部が検挙され、いつ組織が解散に追い込まれるかわからない。本質的な不確性にもかかわらず、アウトローの組織が比較的長期間安定的に存在しているということは、一つのパラドクスである。
ただし、法的根拠のない結社であるという点では、政党も同じである。離合集散を繰り返すという点でも、ヤクザと正統は似ているかもしれない。
 実際には、ヤクザは驚くほど永続的である。警察が弱小団体を解散に追い込むことによって、主要団体はかえって強大になっていく。現在では、暴力団の半数以上が、上位3団体に組み込まれていると言われ、右翼や総会屋も、この3団体のどれかと関係なしに活動することが難しくなっている。
 この永続性パラドクスを解決するには、アウトローの不確実性の背後に、何か安定した原理が存在することを考えなければならない。

 アウトローを封じ込めるための法律の改正や警察組織の改正が頻繁なため、アウトローは、つねにアンテナを立てて、社会、法律、経済の動きに敏感に反応している。一つの仕事がもう儲からないとなれば、さっさと撤収して新しい仕事に転向する。
 アウトローは、不確実であるゆえに、社会、法律、経済の変化に適応できる永続的な組織を必要とし、豊富な情報、人材、資金、信用、忠誠によって、組織を永らえているのである。
 不確実性を逆手にとって、高い情報収集能力と適応能力を備えることこそが、ヤクザの永続性のパラドクスを解く鍵である。
 逆に言えば、こうした情報収集と適応の努力を惜しんだ組織は、社会の変化に取り残され、永続性を失っていくと。社会と経済の変化が急になるにつれて、存続が難しくなるのは、企業も、政党も、ヤクザも同じである。
 すべてが転機を迎えている今、ヤクザもその例外ではないし、なんらの法的根拠もないヤクザへの逆風はより強くなるだろう。

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