I-Method

アウトローとベンチャー

第3部 ベンチャーによるアウトローの超克
 第8章 産廃業界の再編
  2 二つの新機軸

2−2 環境省の「産業廃棄物処理業優良化推進事業」


 環境省は、これまで罰則の強化と、排出事業者責任の強化が、不法投棄対策の決め手だとしてきた。これはいわば出口と入口に対する対策であり、産廃業界という中間の対策は手付かずだった。
 しかし、許可業者が不法投棄の構造に深く関与していることを否定できなくなり、真剣な議論を経て、2005年4月から「産廃業者優良化推進事業」をスタートさせた。この事業は、この業界の優良化の取り組みを、産廃業者の自律的な情報公開によって証明していこうというものである。
 しかし、産廃業界のトップ企業も、「まだ現状ではこの事業の条件を見たせる企業は少ない」と正直にコメントしているとおり、この事業によって、ただちに優良事業が選別されたり、魔法のように産廃業界が優良化するのではなく、それぞれの事業者の取り組みがこれから始めるのである。

 産廃業者の許可は5年更新であり、この事業の条件を満たしているかは、許可更新時に自治体が審査するしくみになっているので、2010年にならないと審査が一巡しない。
 そこまでとても待ち切れないという人のために、私はこの事業で公開されたデータの分析手法を確立し、それを基に産廃業者のランキングをリアルタイムで更新していく仕掛けを、できるだけ早く作りたいと思っている。
 そのベースとなるのは、「不法投棄はこうしてなくす」(岩波書店)で紹介した、優良な産廃業者の見分け方や財務諸表の分析手法である。この手法は、「廃棄物・リサイクルガバナンス」にも、「産業廃棄物処理業者優良化推進事業」にも取り入れられている。
 自治体による審査と、独自の基準による産廃業者のランキングが同時並行で進められることによって、この事業に参加する産廃業者が増え、公開される情報の標準化が進めば、廃棄物・リサイクルガバナンスの構築にも結び付き、産廃業界の再編が加速するに違いない。そのために重要なのは、国が定めた基準に従うことではなく、むしろその基準の限界にチャレンジしていく創造力と発想力である。

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