アウトローとベンチャー
第2部 アウトローの手口と封じ込め
第4章 警察と行政の弱点
2 行政の弱点 |
2−2 行政の構造転換
アウトローの経済活動を封じ込め、資金源を断つには、専門分野の知識を有し、行政法による許認可権を行使できる行政が最前線に立ったほうがうまく行く場合が多い。逆に言うと、これまでアウトローの経済活動を封じ込められなかったのは、行政の組織力が欠けていたことが一つの理由である。
行政が組織的にアウトローに対応せず、やる気のある職員だけが独走すると、危険である。廃棄物処理業者に厳しい処分をした職員が逆恨みされて殺害されるという事件もあった。
現在の法律と行政の枠組みの中でできる最善のことは、行政がアウトローを取り締まる専門のチームを編成し、その一員として警察官の出向を求めることである。これは、産業廃棄物の不法投棄対策で、多くの自治体が採用している方法であり、大きな成果を上げている。
ただし、出向を求めた警察官が主体となってしまっては、行政の監視チームを編成した意味がない。行政に出向した警察官は、あくまで行政の一員として、行政的な手法の範囲内で業務を遂行すべきであり、警察手帳を取り出すような場面は極力避けなければならない。
理想的には、分野ごとに行政委員会を設置して、専門知識を持ったエキスパートを配置し、担当職員に警察官あるいは検察官と同等の捜査権、逮捕権を与えて、組織犯罪や経済犯罪に取り組むことが望ましい。
アメリカを模倣して、日本にもいくつかの行政委員会が設置されているが、規模が小さく、ほとんど事後処理的な機能しか果たせていない。
行政がアウトローを本気で封じ込めようとするなら、草の根の監視が必要であり、膨大な人員を揃えなければならないので、公務員の大増員につながるのではないかと懸念するかもしれない。しかし、行革と地方分権を進めれば、数万人単位の公務員が余ることになるから、心配はいらない。
行政委員会は、アウトローだけを専門にするのではなく、市場のルールが守られているかどうかを全般的に監視するのである。これは、合法的な経済活動を偽装し、一般企業や一般市民の中に紛れ込んで活動しているアウトローには一番困ることなのである。
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