I-Method

アウトローとベンチャー

第2部 アウトローの手口と封じ込め
 第5章 情報がアウトローを封じ込める
  1 情報の秘匿と公開

1−1 経済情報の公開


 経済的アウトローにとって、情報の秘匿は本質的なことである。二重価格を維持するためには、一物一価がみせかけであり、価格が不当に高いという情報を秘匿しなければならない。情報が漏洩するという非対称性(不公平)によって、二重価格は漏洩先の利益に結びつく。
 情報には、表の情報と裏の情報、報道されている情報と報道されていない情報、真実の情報と虚偽の情報など、さまざまな二重性がある。
 正確な情報を誰よりも早く入手することは、どんなビジネスにとっても重要だが、とりわけアウトローには重要であり、アウトロービジネスは情報ビジネスであると言っても過言ではない。
 アウトローは、裏の情報や秘匿された情報を駆使し、それをビジネスに結び付ける。アウトローは、単に情報を収集して利用するだけではなく、情報を捏造することもあるし、他者の情報に暴力的に介入することもある。
 情報の捏造には、詐欺、書類の偽造、デマなどがあり、暴力的な介入には、暴露、口止め、恐喝、街宣、総会屋などがある。右翼が発行する新聞や雑誌も、情報介入に利用されている。
 アウトロービジネスは、情報に極めて敏感である。法律の改正、警察の取り締まり方針などに、鋭敏に反応し、手口を変えていく。非合法のビジネスは、警察力との微妙なバランスの上で成り立っているので、いつまでも同じ手口が通用する世界ではない。
 アウトローの情報の利用の仕方には、非合法なものもあるが、ビジネスモデルとして普遍性を持っているものもあり、後者はベンチャービジネスに転ずる可能性があると言える。

 国家によって秘匿された情報は、一部の業界に故意に流される。これがインサイダー情報である。戦前の外務省と商社の癒着や、戦後は公共事業入札情報の政治家(国会議員、地方議員)への漏洩、証券会社や信託銀行による大口顧客の一任勘定などが、インサイダー情報の典型である。
 こうしたインサイダー情報の一部は、アウトローにも流れる。これがウラ情報であり、暴力団、右翼、政治団体は、積極的にウラ情報の収集を行い、これをさまざまなアウトロービジネスに使う。アウトローが自らウラ情報を使って、土地投資や証券投資を行う場合もあるし、ミンボー(口止め、恐喝、暴露、デマ、捏造、街宣)などによって、渦中の企業をゆする場合もある。
 インサイダー情報は、マスメディアにも流れる。ジャーナリズムの役割は、秘匿された情報の暴露にある。しかし、メディアには報道の自主規制があり、さらに情報を開示せずに自社の利益のために利用する場合すらある。地価バブルの時代、大手メディアには自ら土地投資に走るところも多かった。これが土地投機の危険性を警告する報道がほとんどなかった理由の一つだとされている。

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