I-Method

アウトローとベンチャー

第2部 アウトローの手口と封じ込め
 第5章 情報がアウトローを封じ込める
  1 情報の秘匿と公開

1−3 ジャーナリズムとアウトロー


 アウトローの存在は、社会システムの欠陥に対する警告としての機能を有する。しかし、ジャーナリズムの暴露機能がなければ、アウトローの警告機能は社会システムを変革する力にならない。
 ジャーナリズムの使命の一つは、権力とアウトローの癒着の秘密を暴くことである。秘密があるところには利権があり、逆に秘密は利権を維持するために守られている。この秘密が暴露されることによって、構造は流動化し、新たな構造への変革が可能になるのである。
 報道を構造変革のダイナミックなプロセスへと高めるためには、ただ事実の調査報道に徹するだけではなく、事実の裏に隠された構造を解析することが必要である。
 メディアがアウトローの犯罪を告発した結果として、警察がアウトローを検挙したとしても、それはアウトローの抑止力になるだけであり、アウトローの存在を抹殺する力にはならない。この場合には、メディアは社会システムのインサイダーとして振舞っているにすぎないからである。
 メディアが、アウトローを生じさせている社会システムの矛盾それ自体を告発したとき、初めてメディアは社会システムに対して、アウトサイダーとして挑戦していることになる。この告発の矛先は、メディア自身に及ぶこともある。
 古い構造の利権が壊れても、新たな構造がまた利権を生み出す。構造の革新は終わりのない戦いである。だからこそ、構造の秘密を暴露するジャーナリズムもまた永遠に必要になる。構造が浮かび上がるまで粘り強く一つのテーマを追いかけるジャーナリズムの本領にメディアが復帰することを期待したい。

 市民社会が成熟すると、権力は一方的に市民に押し付けられるものではなくなり、市民に窓口を開くこと、すなわちコミュニケーションを媒介として成立するようになる。
 三権分立が市民に開かれた窓口であるという解釈は、メディアが第四の権力であるという議論にも適用できる。
 この場合、メディアは単なる報道機関ではなく、市民の訴えを聞き入れる四番目の窓口だということになる。メディアを第四の窓口と考えるなら、インターネットが第五の窓口になる可能性も高い。すでにアメリカでは、世論形成へのインターネットの役割が無視できなくなっている。
 権力が市民への窓口であるという観点を逆転させると、市民に窓口を開くことが、権力への道に結びつく。
 アメリカ大統領選挙では、久しい以前からメディアを活用したキャンペーンを制する陣営が選挙を制してきた。最近ではインターネットの活用も著しい。
 日本でも、
 国政選挙のたびに、テレビ朝日が、反自民党的な報道をすることが物議をかもしており、同局は自民党からの広告収入がほとんどないことでも知られている。しかし、この程度の偏向報道にひるむことはない。これに対してフジテレビは親自民党的であることで知られている。
 また、地方自治体の首長選挙で、メディアの活用方法が、当落を決定するほどの重要性を持つようになってきた。今後は、インターネットの重要性が増していくに違いない。

 アウトローも、ある意味では窓口として機能してきた。それがビジネスに発展したのがミンボーだとも言える。アウトローはすべての市民に開かれた窓口ではないという点で、権力への道には結び付かなかったが、闇の世界の支配力を確立するために、ある特定の階層のルサンチマンを吸収する窓口となってきたという解釈も可能である。

先頭のページ 前のページ 次のページ 末尾のページ