I-Method

アウトローとベンチャー

第2部 アウトローの手口と封じ込め
 第5章 情報がアウトローを封じ込める
  3 戦略的CSR

3−1 企業情報のオモテとウラ


 どんな企業にも、必ずオモテとウラ、公表されている情報と公表できない情報がある。大企業であればあるほど、ウラの情報も多くなる。
 談合や天の声(政治家の口利き)を利用したことがないと言い切れるゼネコンがあるだろうか。産業スパイを利用したことがないと言い切れる電機メーカーがあるだろうか。中毒や汚染を隠蔽したことがないと言い切れる食品メーカーがあるだろうか。試験データを改竄したことがないと言い切れる製薬会社があるだろうか。総会屋に利益供与したことがないと言い切れる上場企業があるだろうか。
 個人的には、不都合なデータを隠蔽し、好都合なデータを捏造することが悪いことだとわかっていても、組織を危機にさらしてまで完全に潔白でいられる人は決して多くはない。

 官庁への届出、税務署への申告、株式市場への報告など、いくつかの情報公開については、法律でも規定されている。しかし、ウラの情報があることなど、法律には書きようがない。
 企業が持っている情報のどこまでをオモテにすべきか、逆に言うと、どこまでをウラにすべきかは、それぞれの企業に不文律として存在している。
 このオモテとウラのバランスは、それぞれの国によっても、それぞれの業界によっても、そしてそれぞれの企業によっても異なる。それはいわゆる風土であり、歴史的・地理的に形成される文化である。
 日本には、情報公開が進まない風土があった。すべてが横並びになっているため、どの企業も似たり寄ったりであり、情報公開など必要だと感じなかった。だが、経済が国際化し、流動化するにつれて、それでは済まなくなってきた。
 これまでは許容されてきたネガティブ情報の隠蔽体質が、かえって組織を危機にさらしてしまう事例が増えたり、内部告発が増えたりしているのは、日本の企業風土、業界風土、社会風土が変質してきている証である。
 こうした変化に対応して、情報公開を進めていくかどうか、日本の企業風土が分岐点に差し掛かっているのである。

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