I-Method

アウトローとベンチャー

第2部 アウトローの手口と封じ込め
 第5章 情報がアウトローを封じ込める
  1 情報の秘匿と公開

1−2 警察情報の公開


 警察は、社会システムからの逸脱を是正することが使命であり、社会システムの矛盾それ自体を、警察が問題にすることはできない。
 警察にとっては「悪法は法」であり、そもそも「悪法」という言葉はタブーである。公権力が社会システムそれ自体の矛盾を公に認めることは、革命が必要であることを認めることに等しい。
 警察の反革命性は、アウトローの半革命性と、深いところで一致する部分もある。明治以来の近代日本の歴史において、アウトローと権力が一致して、革命的活動(自由民権運動、大正デモクラシー、共産主義運動、安保闘争など)に対抗してきたのは、偶然ではない。
 社会システムの枠組みを転換することは、政治に与えられた機能である。しかし、政治もまた、改革が可能な範囲内でしか、社会システムの問題点を公表しようとはせず、その根源的な不完全性については秘匿しようとする。

 警察は、アウトローと戦うために、膨大なアウトロー情報を蓄積し、それを秘匿している。もちろん、この秘密主義は、捜査上の都合、人権(個人情報)の保護、警察官の安全など、いくつかの正当な理由によるものである。
 市民社会が成熟するにつれて、公権力に対する情報公開の要求は厳しくなっていく。これは警察も例外ではない。
 さまざまな警察の不祥事が明るみに出るようになっているが、これは警察が浄化されていく過程で不可避的に起こっている現象であり、警察の未来について悲観的になることはない。

 アウトローの成立根拠となる社会の二重構造は、情報の秘匿によって維持されている。アウトローは暗黒社会でなければならず、その組織も活動も、一般人にとってブラックボックスでなければならない。
 TVや雑誌のアウトロー特集、ヤクザ映画、右翼関連書籍などで、アウトローの世界は断片的に紹介され、ときには戯画化されたり美化されたりして描かれている。だが、その程度のことなら、むしろ一層、闇の深さに対する恐怖心を煽ることにしかならない。情報の秘匿は、アウトローの組織を神秘化している。
 警察がアウトロー情報を秘密にしていることは、結果的にはアウトローの経済活動をやりやすくしている。アウトローが恐れるのは、警察情報の公開である。暴力団員やフロント企業の情報が公開されたら、ブラックリストにあげられた人物や企業は、経済活動を続けられなくなる。逆に言うと、ブラックリストが公表されないかぎり、アウトローは公然と経済活動を続けることができる。アウトローの利益の大半は、警察情報の秘匿によって守られているといっても過言ではない。
 ブラックリストリストが公開されない理由は、捜査上の都合や人権上の配慮であるが、作成方法や内容の確実性に疑問符がつくことも一因になっている。しかし、公開が義務付けられれば、間違いも少なくなるに違いない。

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