I-Method

アウトローとベンチャー

第2部 アウトローの手口と封じ込め
 第5章 情報がアウトローを封じ込める
  3 戦略的CSR

3−3 環境戦略と環境報告書


 環境が、CSRの中核的なテーマになるのは、この問題に対する対応が企業のイメージアップにつなげやすいからである。企業が生産活動を行えば、当然に公害問題や廃棄物問題のような環境に対してネガティブな問題を引き起こす。だが、それをポジティブな情報に変え、企業のイメージ戦略として使っていくのである。
 CSRは、ただ企業が社会的責任を果たすということではなく、そのことを社会にアピールしていくというデモンストレーション効果を本質的に含んでいる。
 ISO14001のような環境規格、環境報告書やCSR報告書、環境シンポジウムのようなイベントの開催、環境や災害ボランティアへの参加は、CSRのツールであると同時に、広報のツールである。
 環境は、CRSとして取り組みやすいテーマであり、環境によい企業という実績作りやイメージ作りは、少しずつ消費者の商品選択に影響を及ぼし始めているし、銀行融資、投資ファンドなどに環境が一つのテーマとして取り上げられるようになってきている。
 積極的に環境ビジネスに参入する大企業も増えている。環境ベンチャーを起業する者には、大企業の環境担当者、シンクタンクや大学の研究者、経済官僚出身者も少ない。環境ベンチャーには、アウトローの手口を研究し、アウトローが独占してきた市場を席巻し、奪還するという観点が重要である。アウトローを排除するのではなく、アウトローの市場を維持しながら、それを着実にベンチャーに置き換えていくのである。アウトローのベンチャー化にとって、もっとも重要なテーマは情報公開であり、反社会的な存在であるアウトローとベンチャーの違いは、CSRにあると言える。逆に言えば、CSRのないベンチャーは、アウトローに過ぎない。
 CSRは戦略的な位置づけがあってこそ、始めて企業の活動として根付くのであり、単なる道徳心とか、単なる遵法精神とかで、この問題を論じてはならない。オモテとウラのバランスという現実的な観点から、あるいはネガティブ情報のポジティブ情報への転換と言う戦略的な観点から、この問題を論じなければならない。

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