I-Method

アウトローとベンチャー

第3部 ベンチャーによるアウトローの超克
 第7章 価格差戦略
  1 不法投棄と需給ギャップ

1−4 バーゼル条約と循環型経済


 中国経済の急進展により、中国が世界中のスクラップや再生資源をブラックホールのように吸収しはじめ、鉄や石油などの資源価格が急上昇し、レアメタルやコークスなどの供給不足が深刻になっている今日、循環型社会は、環境の言葉としてではなく、経済の言葉として現実味を帯びてきており、循環型経済という言葉も使われるようになっている。
 廃棄物処理の市場がリサイクルを含めて20兆円に拡大し、さらに中古車や中古家電も含めて50兆円に拡大するということは、産廃アウトローの市場規模が2〜5兆円に拡大することを意味している。循環型経済の到来は、アウトローの世界にとっても、ビッグビジネスのチャンスなのである。
 廃プラスチックの資源ごみ輸出が中国系商社に独占されたり、中古車輸出がパキスタン人ブローカーに独占されたりという国際化も急進展しており、その一部がアウトロー化している現実も否めない。
 日本から輸出された廃プラスチックが中国のチンタオで起こしたトラブルに端を発して、2004年5月に発動された日本から中国への廃プラ全面禁輸措置は、香港を経由した迂回輸出ルートによって吸収されてしまった。香港は、もとから中国への禁輸品の迂回輸出の拠点となっていたのだから、驚くにはあたらない。
 これは中国だけのことではない。日本からの資源ごみや中古家電などを禁輸している国があったとしても、禁輸していない隣国を経由した迂回輸出ルートは必ず存在する。需要があるのに無闇に規制しても、かえってアウトローを増長させてしまうだけなのは、国際経済でも同じなのである。
 廃棄物の不法投棄問題でも、不正輸出問題でも、法律で禁止されているから取り締まればいいという素朴な観点からは何も生まれてこない。何がニーズであり、そのニーズがどんな手段で満たされており、その手段にどんな問題があり、どんな代替手段があるのかという経済的観点だけが、アウトローの問題を根本的に解決する力にもなるし、ビッグビジネスのチャンスにもなる。ニーズをアウトローが満たしているという現実があるときには、アウトローを封じ込めるのではなく、ニーズを誘導することを考えなければならないのである。
 現実は経済によって動いている。法律は、息を吹きかければ飛んでしまう表面の泡にすぎない。不法投棄問題から学べる最大の教訓は、アウトローと戦うには、経済を見なければならないのであり、法律を見てもダメだということである。

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