I-Method

アウトローとベンチャー

第3部 ベンチャーによるアウトローの超克
 第7章 価格差戦略
  2 価格差の戦略化

2−3 国際経済とアウトロー


 国際経済もまた、二重価格の宝庫であり、アウトロービジネスの宝庫となっている。
 外国にはその国の法律があり、国際間の条約や協定などの国際法もあるが、内外の制度には大きな格差があり、日本の法律も制度も常識も及ばない外国は、国内から見れば本質的にアウトローの世界である。
 このため、どんな大企業でも、国際経済の舞台では、アウトローの視点で対処しなければならない。世界と日本の制度の差に目を付け、価格差に目をつけた小さなベンチャー企業が、それをうまく利用して急成長することも珍しくない。
 単純に外国で開発されたビジネスモデルを国内に移入して成功する例もあるが、国際ビジネスにとってもっとも重要なのは、内外の二重構造をビジネスに結び付けるアウトローの視点である。
 国民国家の独立を前提とした国際社会は、国際的な二重構造を前提としている。重婚、学歴詐称、二重国籍は常識であり、書類の偽造をチェックするすべもなく、禁輸されている物資も、隣国を経由してどんどん迂回輸出されていく。国境とは、こうした二重構造を守るための境界なのである。

 国内法の常識で、国際社会を考えても始まらない。かつての日本がそうであったように、いまでもアジアは賄賂社会であり、そのシステムの複雑さは、日本の比ではない。
 アジア諸国の政府や企業と取引をしたいと思うなら、賄賂が悪いといっても始まらない。現実のシステムを受け入れ、リスクを犯しながら勝ち抜くことがビジネスであり、それがいやなら、海外で起業することはできず、ビジネスを国際化していくことはできない。現実と結果を重視し、手段を選ばないマキアベリズムが必要である。
 逆に言うと、国際的なアウトローに対抗することは、一国のアウトローの問題とは比較にならないほど困難な課題だということになる。

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