I-Method

アウトローとベンチャー

第3部 ベンチャーによるアウトローの超克
 第7章 価格差戦略
  2 価格差の戦略化

2−2 正規価格とアウトロー価格


 市場に二重価格があるとき、高い方を正規価格、安い方をアウトロー価格と短絡的に考えてはならない。確かにアウトロー価格は低価格であることが多い。模造品、偽造品の価格は、素人には見分けがつかい精巧なもので、正規価格の60%程度である。たとえば偽造券が金券ショップに出回って販売中止となった高額ハイウェイカードは、5万円の額面のものが3万円で売られていた。
 しかし、密輸品や高級風俗店のように、アウトロー価格がむしろ高価格であることもある。低価格か高価格かにかかわらず、アウトローは正規価格との価格差を搾取しようとするのである。

 一般には、低価格はダンピング価格(投売り価格)と言われる。しかし、低価格の方が理に適っていて、高価格のほうが不合理に高いということもある。
 公共事業では、元請の受注価格を100とすれば、下請けへの発注価格は80、孫受けへの再発注価格は60、末端業者の受注価格は50程度である。この場合、合理的な価格はどれだろうか。もしも建設業界の下請け構造を整理することができれば、公共事業は予算の60〜80で施工可能だと言われる。
 産業廃棄物の不法投棄はダンピング価格の典型)だが、最終処分場の料金が合理的なわけでもない。最終処分場といっても、穴を掘って廃棄物を埋めているだけのところもあり、不法投棄のほうがコストを直接反映した価格になっているという見方もできる。
 規制を無視しているアウトローの価格のほうが、かえって純粋に市場性が働いて、採算性ぎりぎりの低価格になっている。法律による許認可や行政指導が、構造的な高価格を生み出しているのである。

 アウトローが価格差を詐取する結果、アウトロー価格は上流価格と下流価格に二極化する。産業廃棄物の処理では、上流の正規処理価格が1立方メートル1万円であるのに対して、下流の不法投棄価格は1立方メートル千円であり、価格は10分の1に下落している。逆に麻薬、覚醒剤、偽造カードなどでは、上流価格が安く、下流価格が高い。
 上流と末端の価格差は、アウトローのピンハネ構造によって吸収され、組織の序列を維持するための資金源となるのである。

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