I-Method

アウトローとベンチャー

第3部 ベンチャーによるアウトローの超克
 第6章 アウトロー経済学
  1 不法投棄の経済構造

1−1 不法投棄廃棄物の種類の変化


 不法投棄は、2年もすれば様変わりする手口の変化の激しい犯罪である。したがって、これさえやればという決定的な取締りの方策はなく、次々に出てくる新しい手口に対応していかなければならない。この点では、金融犯罪など、他のアウトローの犯罪と同じである。
 不法投棄の手口の変化は、不法投棄される廃棄物の種類に端的に現れる。80年代から90年代初め頃までは、スクラップ&ビルドの都市開発、リゾート開発、巨大な公共事業に伴って大量に排出される建設汚泥やコンクリートガラなど、建設系廃棄物の不法投棄が多かった。
 しかし、建設汚泥は流動化処理による埋め戻し材としての再利用が進み、コンクリートガラは破砕して道路の路盤財に再利用することが進んだため、不法投棄現場から姿を消した。
 95年前後になると、低金利に誘引されて住宅建設が増え、木造家屋解体物の不法投棄が増えた。また、原油安から使い捨てのプラスチック製品が増えたため、不法投棄も増えた。さらに医療・介護材料の使い捨てが増えたせいか、医療系廃棄物(感染性廃棄物)の不法投棄もたびたび問題となった。
 廃プラスチック類は、中国経済の進展によって、2001年からの素材価格が高騰し、中国へ資源として輸出されるようになったため、不法投棄現場から姿を消した。
 経済の地域的な格差の拡大によって、不法投棄問題も地域ごとに異なった様相を示しつつある。岐阜市、敦賀市、四日市市など、中京経済圏で大規模な不法投棄が相次いで発覚している背景には、この地域の経済、人口動態、建設ブームと無関係ではないと考えられる。この地域は、出生率、失業率、工業出荷高など、さまざまな指標が、全国平均とは異なったトレンドになっていることが知られている。

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