I-Method

アウトローとベンチャー

第3部 ベンチャーによるアウトローの超克
 第6章 アウトロー経済学
  3 アウトローのベンチャー化

3−3 3つのベンチャー


 3つの失敗から、3つのアウトロービジネスが生まれ、ひいてはベンチャーのビジネスチャンスが生まれる。
 第一のアウトローは、人的ベンチャーへと転ずることができるアウトローである。人的ベンチャーは、被差別階級や社会的弱者に着目する。人的ベンチャーには、マイノリティを組織化して雇用を提供し、マイノリティを救済するための市場を開拓する。マイノリティの組織は、売り手側になることもあるし、買い手側になることもある。
 ベンチャーとして急成長している高齢者や障害者に対する介護ビジネスは、社会的弱者を買い手側として組織化していると言え、残念なことに弱者を食い物にするだけのアウトローの侵入も見られる。

 第二のアウトローは、法的ベンチャーへと転ずることができるアウトローである。法的ベンチャーは、法の空白に着目し、違法と脱法の境界で勝負する。
 ベンチャーとして急成長しているリラクゼーション産業は、この分野の法律(はり灸按摩マッサージ師法)が、世界のさまざまな国のマッサージ技術(韓国式、台湾式、タイ式、英国式など)をカバーしていないという法律の空白、あるいは法律の運用の空白に着目していると言える。

 第三のアウトローは経済的ベンチャーへと転ずることができるアウトローである。経済的ベンチャーは、二重価格に着目する。二重価格は広い意味でのカルテルから生ずる。経済的ベンチャーはカルテルに挑戦し、二重価格を解消し、価格破壊を起こすための市場開拓を行う。
 価格破壊の象徴となった100円ショップやユニクロは、内外価格差、とくに労賃の格差に注目した貿易ベンチャーである。
 日本の高物価は、高労賃、高物流費、高地価、高金利(アウトロー金利)によるものだが、とくに高物流費によるところが大きい。高物流費は、燃料費と高速道路料金が原因であり、高速道路料金が高いのは、道路4公団と建設業界の癒着が原因である。小泉内閣の構造改革の嚆矢として注目された道路公団改革だったが、物流費は下がっていない。
 このため、アウトローが密造ハイウェイカードや密造回数券を販売することによって、物流費を下げようとした。一方、燃料費についても、アウトローが安価な不正軽油を供給することで実質的に下がっている。これらは犯罪であるには違いないが、不合理に高すぎる物流費と、その背景の二重価格の搾取という政治的、経済的な構造があるからこそ、アウトローが侵入してくる余地があるのであり、ただ犯罪としてハイカや軽油の密造業者を摘発するだけでは、根本的に解決しない問題である。

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