I-Method

アウトローとベンチャー

第3部 ベンチャーによるアウトローの超克
 第6章 アウトロー経済学
  2 経済的アウトロー

2−4 アウトローと企業活動


 日本企業は、戦前にも戦後にも、アウトローとの関係を抜きにして、生存し続けることはできなかった。大正デモクラシーの時代から、企業と警察は、スト破りや赤狩りのためにアウトローを利用してきた。
 日本の右翼が福岡に発祥した玄洋社を始祖としているのは、福岡が炭鉱の町であり、ストの町だったからである。玄洋社が日本と大陸を隔てる玄界灘を名前の由来にしているのは、その後に軍部と右翼が進めた大陸拡張の歴史をみると、ある意味では先見の明があったと言える。
 戦後にも、右翼はスト破りのために動員され、安保闘争の際には、警察予備軍としても組織された。

 企業とアウトローの癒着は、総会屋に象徴される。水俣病などの公害病が大きな問題となっていた時代に、公害を起こした企業(チッソなど)から依頼された右翼が株主総会を支配し、被害者を暴力的に排除したため、総会屋の存在は世界のメディアの知るところとなった。
 総会屋を排除する商法改正によって、総会屋問題は峠を越したと警察庁は発表しているが、ミンボーと名前を変えて、総会屋ビジネスは続いている。

 総会屋だけが、企業とアウトローの関係ではない。どんな大企業だって、最初から大企業だったわけではなく、アウトローから出発して大きくなった企業は珍しくない。大企業になった後でも、法律があまりにも現実とかけ離れているから、企業の仕事はオモテとウラに分裂してしまう。
 とくにアウトローの世界と関係の深い企業は、企業舎弟と言われたり、フロント企業と言われたりするが、企業ごとに、白黒の区別があると考えるのは単純すぎる。日本を代表するような大企業だって、黒い部分がどこかに必ずあるものだ。どの企業も、近づいてよく見れば、白と黒を使い分けるツートンカラーである。ただし白黒の色分けが見えないようにモザイクやヴェールをかけているため、外側から見ると、なんとなく白っぽかったり、なんとなく黒っぽかったりして、どこが問題なのか判別できない。これがグレーということだが、実際にはグレーという色の企業はない。

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