I-Method

アウトローとベンチャー

第3部 ベンチャーによるアウトローの超克
 第6章 アウトロー経済学
  2 経済的アウトロー

2−1 アウトロー経済学


 アウトロー学の第3の分野は、アウトロー経済学である。社会と経済、法律と経済は、不即不離に結合しており、社会の二重構造や、法律の二重構造は、経済の二重構造を生み出し、経済の二重構造は、逆に社会と法律の二重構造を支えている。
 通常の経済学が、市場の公正、あるはその結果としての一物一価を前提として理論を構築するのに対して、アウトロー経済学は、公正でない市場と二重価格を前提とする。アウトロー経済学は、市場の失敗や矛盾を暴きだす経済学であり、二重価格にこそ経済的利益の源泉があり、経済的ダイナミクスがあるとする経済学である。
 普通の経済学には、財政学という一分野があり、市場経済の中の財政の役割を研究している。しかし、アウトロー財政学の視点からは、公共事業や補助金や許認可は、市場経済の中に計画経済を持ち込む矛盾した状態であり、その結果として財政的二重価格あるいは行政的二重価格が成立すると見る。
 アウトロー経済学的には、市場をいかにして自由と公正(平等)が阻害された状態に保つかが問題であり、完全競争状態は、経済的理想ではなく、経済的死を意味すると考える。
 このような観点からは、二重価格が存在する状態こそが、正常な状態であり、さまざまな経済主体の活動は、合法と非合法とを問わず、すべからく二重価格を維持するための活動であると見なされる。
 アウトロー経済学は、二重構造経済学、二重価格経済学、二重市場経済学、不均衡経済学、不公正経済学、あるいは脱構築経済学と呼ぶのが相応しい。
 アウトロー経済学には、資本主義か社会主義かという区別はなく、むしろ資本主義の中の社会主義的政策、社会主義の中の資本主義的政策の中に、アウトローの存在理由を見出す。
 社会主義的な資本主義の成功例が日本型資本主義であり、資本主義的な社会主義が、ケ小平の改革開放政策以後の中国の社会主義市場経済だと言える。この二つの経済の盛衰は、通常の経済学では説明困難であり、アウトロー経済学的なアプローチでしか、その深い理解は不可能である。
 アウトロー経済学は、アウトロー組織の経済学ではない。アウトローから出発して、大企業に成長したベンチャー企業は少なくない。とりわけ、日本経済の弱点とされる流通や物流には、こうした企業が多い。最近では、インターネッオークションを手がけるベンチャー企業が急成長しているが、これも日本経済の弱点だったからである。アウトロービジネスとベンチャービジネスには共通点が多く、紙一重とも言える。この意味で、アウトロー経済学はベンチャー経済学への発展性を含んでいる。

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